映画の部門別のデジタル化の推移

ハリウッド映画のデジタル化について、製作の部門ごとに推移と現状を見てみましょう。

「撮影」「編集」「配給」

映画製作(脚本などプリ・プロダクションは除く)は、「撮影」「ポスト・プロダクション」「配給・上映」の三段階に分けられます。

カメラからネガへ

映画は、35ミリのカメラで撮影されると、イメージはセルロイド製のフィルムに光化学的に焼付けられます。このフィルムを化学薬品で現像処理したものがオリジナルのネガ(陰画)フィルムです。

編集・音響

このネガからポジ(陽画)のフィルムを作り、それを使って編集・音響などいわゆるポスト・プロダクションが行われます。

劇場へ

編集などすべての作業が終了したところで、オリジナルのネガを切ります。次に、編集されたネガを元に上映用のポジ.フィルムを作り、劇場に送られるという寸法になっています。

編集部門(ポスト・プロダクション)

映画製作の三段階で、デジタル化が最も進んでいたのがポスト・プロダクション(ポスプロ)。つまり、編集です。

コンピュータ編集に移行

ハリウッドの編集(サウンドの製作・編集も含む)はほぼ完全にコンピュータ編集に移行しました。

Avid

映画編集現場では、撮影されたイメージをデジタル化し、Avidなどのソフトウェアを使ってコンピュータ上で編集します。

瞬時に試せる

手で切り貼りするといった従来のやり方では一つのつなぎ方を試すにも手間隙がかかるのに対し、コンピュータ編集では様々なつなぎ方を瞬時に試せます。

配給部門

ハリウッドスタジオの映画スタジオは、フィルムでの配給を停止しつつあります。

ウルフ・オブ・ウォールストリート

配給のデジタル化の流れが加速されたのが2013年。主要スタジオの1つパラマウントがマーティン・スコセッシ監督の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」からはデジタルのハードディスクドライヴだけしか劇場側に提供しない、と通達したのです。

20分の1のコスト

スタジオがデジタル化を進めるのは、コスト差がその背景にあります。劇場用の35ミリ・プリントを作るのに1本当たり2000ドル(20万円)もかかるのに対し、デジタルにすれば100ドル(1万円)もしないといわれます。

メジャースタジオからフィルムが消える

遅かれ早かれ、他のスタジオもこの動きに追従しています。フィルムによる映画の上映は、少なくともハリウッドのメジャー・スタジオの映画に関しては、近い将来、消えてなくなります。

撮影部門

最後の牙城

フィルムにとって最後の牙城とも言えるのが撮影部門。いまだにデジタルカメラへの抵抗感は完全には払拭されていないようです。

デジタルカメラの優位性

それでも、デジタルカメラの映像が日々、進歩しているうえ、利便性やコスト面ではデジタルカメラの優位性が明らかである以上、徐々にデジタルカメラへの移行は進みつつあります。

アカデミー賞作品にも

今では、アカデミー賞にノミネートされるような作品にもデジタルカメラで撮影されたものが珍しくはなくなりました。

苦戦するコダック
パナビジョンはフィルムから撤退

フィルムを製造するコダックが苦しい経営を続けているうえ、パナビジョンなど主要なカメラ・メーカーがもはやフィルム・カメラの製造を止めてしまっている以上、この分野でもあと何年フィルムが使い続けられることでしょうか。